ワインコラム

シャブリよりも夏のワイン!『チャコリー』を愉しむ

夏と言えばシャブリ!?

よく夏に飲みたいワインやフレッシュで爽やかな印象があるワインとして語られる『シャブリ』

このシャブリというワインは、様々なスタイルがあります。(詳しくはシャブリの解説サイトへ)
そのシャブリの中でも樽を使わない特に爽やかなスタイル、ACシャブリやACプティシャブリが夏に人気です。

しかし、今回紹介する『チャコリー』

なんとシャブリを超える夏向きワインなのです。

≪夏におすすめの白ワイン3本セット≫

なぜチャコリーが夏におすすめワインなの?

それをお伝えするためにチャコリーがどういったワインなのかを説明していきたいと思います。

チャコリーとは?

スペイン・バスク地方で作られる「若飲みの白」を主流とした微発泡性の地ワイン。
海が近いことや低温の北風が吹くこと、また多湿な気候がワインに影響を与え、チャコリー独特の風味やフレッシュな酸を作っていると言われます。

3つのDO(原産地呼称)があります。

・ゲタリアコチャコリーニャ
・ビスカイコチャコリーニャ
・アラバコチャコリーニャ

この中でもゲタリアコチャコリーニャは1989年に原産地呼称を取得している主力産地です。
他の産地では天然の残留炭酸ガスは見られませんが、ゲタリアコチャコリーニャではあえて微発泡を残すように作られています。

「若飲みの白」「微発泡」「フレッシュな酸」と夏にぴったりの要素がそろっていますね。

栽培地・ゲタリアは海のすぐ近く

おすすめのチャコリーのぶどうが栽培されている畑はほぼ海から1㎞以内。すぐそこに海が見渡せるエリアで作られています。
ソムリエによっては塩味を強く感じると表現するひとも多いです。私は潮風が味わいに影響を及ぼすことに懐疑的ですが、たしかにわずかに塩味を感じます。

味わいを引き締め、より爽やかな印象を与えてくれます。
海岸やBBQで飲むのにもぴったりですね。

バスクの食材について

バスクの名産はカンタブリア海で撮れる海の幸です。もっとも有名なのが1本釣りのビンナガマグロ。
その他にもタコやアンチョビも非常に美味しいです。

海の幸が豊富という環境も日本と似ていて、親近感が湧きます。
チャコリ―はお寿司にもシャブリ同じくらいすごくよく合うので試してみてください。

おすすめのチャコリー

ガインツァ チャコリー2019

https://suzukicellar.stores.jp/items/60efe4fd72913444d63de13f

産地:DOゲタリアコチャコリーニャ
品種:オンダラビ・スリ
価格:2100円(税込)※2021年7月の情報
取り扱い店:すずきCELLAR

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≪ワインのコルクを再利用!コルカーがかわいい!≫

ワインは『芸術品』なのか。その答えを示したものがあった…

世界最古の文学作品「ギルガメッシュ叙事詩」にも登場する魅惑の液体…ワイン。
起源は紀元前6000年前以上と言われています。
ギリシャ神話にも登場し、ソクラテスをはじめ世界の哲学者などにも愛されてきました。

そんなワインは8000年以上も人々の生活に密着し、進化を遂げ、あまたの人々に愛好されてきました。
もちろん、こんにちの日本でもスーパーやコンビニなど至るところで見つけることが出来ます。
一言にワインと言っても、300円で購入できるものから数千万円という価格のものまで様々。中には『欲しくても売ってくれない…』というような競売に掛けられないワインもあります。
そう、その年のあの人が作ったそのワインは唯一無二なのです。

得てして、ワインにはこのような『芸術品』としての側面があります。
しかし、ワインはただの飲み物ではないのか。そんな思いを多くの方が抱くと思います。

果たしてワインは飲まなくてもいい『芸術品』なのでしょうか。

その問いに答えたワイン愛好家がいます。
ミッシェル=ジャック・シャスイユです。彼はフランスの片田舎ドゥ・セーブル県のちいさな村ラ・シャペル・バトンに生まれました。彼は1941年生まれですので生い立ちを話すと長くなってしまいます。割愛し、一言で言い表すならば『世界一美しいカーヴを持つ男』なのです。
ワインだけでなく世界の銘酒をコレクションする彼は自書である『幻のワイン100 世界最高級ワインと酒蔵(日本版名)』の中でこう言っています。

「飲めもしないボトルを保存していても仕方がないと言われることもある。(中略)もはや美味しくなくてもそれは大切な宝物にあるのである。」(参照:『幻のワイン100 世界最高級ワインと酒蔵』河出書房新社2013年4月出版)

飲むこと以上に彼は保存することに重きを置いています。そのおかげで世界に数本しかないワインが先の世代までのこるでしょう。芸術品としてのワイン、後世に残すべきワイン、彼の人生としてのワイン、そんな銘酒を100本セレクトした本がこの『幻のワイン100』です。

ワインは飲み物以外のなんでもない。そう思っていた方にはぜひ手に取ってもらいたい一冊です。
これを読み終えるころには『ワインは芸術品である』という思考がすこし理解、身近になるような1冊です。シャスイユさんのワインへの熱い想いに心動かされるはずです。

https://fishinthebox.net/2021/03/19/wset%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%aa%e3%81%ab%ef%bc%9f%e3%82%bd%e3%83%a0%e3%83%aa%e3%82%a8%e3%81%a8%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84%e3%82%82%e7%b0%a1%e5%8d%98%e3%81%ab%e8%a7%a3%e8%aa%ac%ef%bc%81/

シャトーシャルマン訪問日記2021.04.05

シャトーシャルマンChateau Charmant基本情報

所在地

シャトーシャルマンChateau Charmant
山梨県北杜市白州町白須1045‐1
HP→ https://www.charmant-wine.com/

主な栽培品種

カベルネフラン
メルロ
シャルドネ
甲州
マスカットベリーA
セミヨン

ワインのラインナップ

通販サイトを参照してください。こちら

視察内容

創業の話

もともと生産者組合の合弁会社のような形で立ち上がったワイナリーを昭和39年に江井ヶ島酒造が買収。
それを機にデラウェアなどを中心に栽培、仕込みをしていた状態から現在の『欧州系ぶどう栽培』にシフトチェンジ。翌年の昭和40年にさまざまな品種を植えたが、土壌にマッチしたカベルネフランが栽培面積の多くを占めることとなり現在に至る。

畑の話

自社ワイナリーにカベルネフラン、メルロの畑が隣接しています。1haくらいあるそう。
垣根のカベルネフラン、棚のカベルネフラン、メルロが植えられています。
ここは駒ケ岳由来の花崗岩土壌。表層2メートル以下は花崗岩土壌。
これがメルロにいちばん合ったのではという。
花崗岩が風化してできた砂系の土壌は水はけも大変良い。
『白須』という地名の由来も『白い砂の多い地』が由来しているという。

奥に見えるのが駒ケ岳

本当にすぐ近くなので歩いて訪問できます。
白州町白須の最低気温は‐10度を下回ることはほとんどないそう。
ここ数年は温暖化の影響も感じている…と。

垣根のカベルネフランの樹は新しく樹齢は3年。
棚のカベルネフランは30年を超すものもあります。(↓写真)

写真の樹は皮がはがれていますが、3年に一度ほど皮をはぎ高圧洗浄機でカイガラムシを洗い流すそうです。

棚栽培のカベルネフラン

やはり高樹齢のほうが良いぶどうが取れるそうだが、最年長よりも20‐30年くらいのものが最良とのこと。
黄色のマーカーが付いている気が最良のぶどうが収穫できる樹です。もちろん、分けて仕込みます。
基本的には『最良』『良い』『あまりよくない』の3段階に分けるそうです。

以外に思ったことが1つ。
最良のぶどうは垣根栽培ではなく棚栽培で取れるそうです。垣根栽培のほうがいいぶどうが育ちやすいというのをよく耳にしますが、山本さまいわくそうとは限らないとのこと。(樹齢が同じでないため単純比較は難しいが…)
樹冠管理(キャノピーマネジメント)や収穫は垣根のほうが手がかからないそうです。

今後、植栽していく樹は垣根栽培にする予定だそうです。

ちなみに以前シャルドネが植えられていた畑は現在なにも植わっておりません。

なにが植えられるか未定…楽しみですね

醸造の話

特別に選果、圧搾をする棟も見学させていただきました。

なかの写真は撮影を控えました…

こちらの棟の中には、圧搾機と発酵に使うステンレスタンク(1500Lサイズ)が並んでいます。
圧搾機とステンレスタンク共に新しいものを使っていることにびっくり。
以前は古いものを使っていたが、現在は空圧で絞るタイプの圧搾機を使って搾汁しています。

収穫後はこちらの倉に選果台を設置し、手作業での選果も行っているそうです。

発酵は赤ワインは自然酵母、白ワインは培養酵母を使用します。
いろいろと試したがこれがいちばんしっくりきたそう。『自然酵母で赤ワインを仕込むと発酵が穏やかに始まっていくので管理がしやすいですね』と山本さんはおっしゃってました。

そうして出来上がったワインは地下の貯蔵庫に保管されます。

これは30年以上使っている超古樽

赤ワインは基本的には樽で貯蔵します。
新樽と2‐6年樽と↑写真の古樽。大きく3つに区分されています。そして瓶詰前にブレンドしていきます。
新樽と2‐6年樽が9割ほどで1割古樽のものをブレンドするのが基調。山本さんいわく『この古樽がいちばんカベルネフランの特徴が出るんです』とのこと。
熟成期間は10か月から12か月。年間通して気温は安定しており、最高気温が20度を超えることはほどんどない。しかし、念のためにエアコンも完備しておりました。

新樽と2‐6年樽

樽での熟成を終えると次は瓶詰し、熟成させます。ワイナリーで詰めるものと兵庫の工場で詰めるものと2パターンあります。ワイナリーで詰めるものは瓶詰とコルクうちも全部手作業で行います(※フラッグシップである尾白や釜無のみ)
さらにワイナリーで詰めるものは基本的にノンフィルター無加熱。

瓶での熟成期間はおおよそ12か月。しっかりと熟成させたのちリリースします。

30年前の古酒とかも眠っています…

おまけの話

シャトーシャルマンでは2種類のタイプの瓶を使っています。
ボルドー型とブルゴーニュ型です。なにか違いがあるの?と思いますよね。
実は重要なポイントになります。
ボルドー型→瓶詰時に兵庫に運び、そこで瓶詰。濾過を行い、加熱もします。比較的クリアに仕上がってます。
ブルゴーニュ型→ワイナリー元詰め。無濾過無加熱。本来の果実味がしっかりと味わえます。
(※シャトーシャルマンにおける区分けです)

こんな違いがあったんですね。勉強になりました。

まとめ

シャトーシャルマンのカベルネフランが良質な理由がわかりました。しっかりした骨格はノンフィルター、きれいな果実味は古樽、そして白須の地に適合したカベルネフランとすべての要素が重なりあって作られている…そう体感しました。

山梨には日本で一番たくさんのワイナリーがあります。そのひとつひとつに個性があり、歴史があり、ロマンがあるなあと改めて感じることができました。シャトーシャルマンさんのワインを飲むときはぜひこの畑や白州町のことを思い描いて飲んでみるとよりワインに浸れると思います。